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サブカルチャー評論/レビュー/日常

『俺の彼女と幼馴染が修羅場すぎる』第8話における固着した物語

 物語の動かなさに少々意表を突かれたというのが初見の感想です。凄く楽しめたのですが、異質なものを感じました。今まで必ず何らかの動きがあったからです。
・第1話 → 彼女ができる
・第2話 → 部活の創立
・第3話 → 幼馴染の心理変化
・第4話 → 主人公が動く
・第5話 → 元カノと出会う
・第6話 → 彼女の心理変化
・第7話 → 風紀委員の登場
ところがどっこい第8話、物語は全く動きません。実はこの「動かない」という所がポイントだったりします。それに気付いたのが2回目の視聴での分析中。いやー考察って楽しいね!では解説していきましょう。


風紀委員の身辺調査

 風紀委員は自分に彼氏がいると豪語し、その嘘を暴くのが現在の部活の主目的となっています。それを暴かないと廃部のままだからです。このことは「レストラン」を「部室」代わりにし、いつものように主人公の黒歴史をぶちまけつつ「風紀委員を落とす」という戦略会議が行われることで表現されます。これが第8話の大筋なのですがこれが全く動かない!最後まで進展なし!という所が違和感の原因であります。


演出的な違い

 物語が動かない、となると当然演出手法も異なるものになります。これまで述べてきた「フレーム」「空間」演出は鳴りを潜め、別の演出が散見されます。「空白を埋めるキャラの動き」です。
 あるカットにおいて、何もない空間=空白ができる、というのはそこに何らかの意図が込められているからです。今回はその空白をキャラクターが動くことで埋める、即ちキャラクターにフォーカスを当てる演出が多数見受けられます。この演出を通してキャラクターはより魅力的に画面に映ります。物語が動かないからこそ、演出でカバーしているわけですね。いやー風紀委員めっさかわええ
 余談ですが、今回ほぼ全てのカットでカメラワークに動きがありません。これも物語の動かなさを暗示しているようなしていないような…。何故こんな曖昧な言い方になるかというと、そもそも『俺修羅』においてカメラワークがかなり抑えられた映像作りがされているからです。亀井幹太監督の演出方針だと考えられます。(『うさぎドロップ』もそのような「動かないカメラ」が意識されていました。これをFIX主義と呼びます。)


主人公と風紀委員と、友人の位置

 大筋が全く動きを見せないのならこの回は何をしているのか?という問題が浮上します。簡単です。主人公と風紀委員の関係をステップアップさせる予備動作です。以降のために勢いを付けた、というところですね。剣道で言うなら打突の前の振り上げ動作。メエエエエエエエエン!!!!!!!!ってなるのは次回以降でしょう。そりゃあ動いて見えないよね。
 その予備動作で行われたのは位置関係を動かすこと。ここでは主人公と風紀委員を中継する友人に注目してみましょう。第8話前半までは必ず主人公と風紀委員の間にいた友人が、後半のWデートの時には幼馴染の存在によりその間を抜けます。この地味ーな友人の静かな位置変更が主人公と風紀委員の接近を上手く表現します。全てのショットにおいて彼らの位置関係を追ってみると面白いですよ。


物語が「動かない」意味

 この段階で物語を動かすこともできたはずが、何故動かさなかったのか。答えは「視聴者にフラストレーションを与えるため」です。このフラストレーションこそ、次回以降の展開にカタルシスを与える必要条件なのです。主人公と風紀委員の関係に話数を割いている事からも、この関係性が非常に重要、物語のキーであることが伺えます。よって「動かさない」ことによるフラストレーションからの爆発が必要だったわけです。
 しかし視聴者はフラストレーションなど望んでいません。そこを見事に緩和させたのが今回の演出方法だったというわけです。演出ってすごいね。


まとめ
・物語は動かなかった
・が、十分なストレスがかけられた
・次回の爆発力に期待

 空白演出以外にもドキッとした部分が多く見られました。例えば「フレーム」演出、主人公が「ガラスの反射」で「塾の教室」の外にいる風紀委員を見るカットとか、手鏡で髪を整えた風紀委員がその手鏡を落とす演出とか。細かな演出によって隠されていますが今回はかなり物語にストレスがかけられた回となりました。次回予告に例の「打ち上げ花火」描写があったことから、非常に大きな物語の動きが期待されます。ああー待ちきれない!ではまた次回で!

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