サブカルチャー評論/レビュー/日常

『となりの怪物くん』5話に見る「声の演出」

 今期は個人的に忙しいこともあって『ジョジョの奇妙な冒険』『となりの怪物くん』の2作品のみを直感で選んでTV録画して視聴している。その両方共が個人的にヒットしていて僕の選美眼もここまで来たか、と自惚れているところであります。

 さてその『となりの怪物くん』5話で「おっ」っと思う演出があったので一筆。

 吉田春は傍若無人である。怪物くんと形容されるにふさわしい容姿行動である。そのズケズケと他人に付け入るところは2学期始めに大量の学生がいるところで水谷雫に対しデートの話題を大声で振るところからも見て取れる。そんな彼であるが、中学の不登校時に高校の範囲を全て勉強しているので、授業中は暇である。そして『となりの関くん』ばりに内職をし始める。黒く細長い棒を組み立て何かを建築中。そして視聴者の予想通り、その構造物は脆くも崩れ去る。この瞬間、彼の性質からは大声で落胆を表現してもいいはずである。しかし実際の画面では「息を殺して」悔しがっていた。

 この意外な反応こそが彼の人間性の複雑さを一瞬で表現している。前者の「通学路」と後者の「授業中」という環境の違い。その空気を読まなかったり読んだりする行動原理の訳のわからなさ。これこそが彼が「怪物くん」たる所以なのだろう。

 この人間性をあの一瞬で表現している演出に拍手。