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フレデリック・バックとは誰か、僕は知らなかった。

 広島県立美術館特別展示「フレデリック・バック展」に行ってきました。2度のアカデミー賞受賞経験を持つ短編アニメーション界の至宝フレデリック・バックの半生、そしてそれを土台にしたアニメーション作品という流れるような展示内容。フレデリック・バックの映像を見る上でこれほどまでに洗練された紹介はないでしょう。

 展示前半は短編アニメーションを作るに至るまでの人生。フランスで生まれ2歳から絵を描き始め、15歳で乗馬姿を描き、美術学校に入ってからはそこで学んだであろうパースに乗った多くの風景画を残している。また戦争中であったため、戦場ルポライターさながらに多くのスケッチを描いた。その後カナダのケベックへ移住しているがケベック州がフランス語のみを公用語としていることは彼の選択と何らかの関わりがあるのではと推察することもできる。移住後は仕事として様々な絵を描きながらも、無給休暇を得てカナダ中を旅してライフドローイングを描き続けるなどまさに人生そのものが絵でできている。

 このような文化に触れ続けた彼がアニメーションを描くに至るターニングポイントがテレビ局での仕事であった。そして短編アニメーション制作へ。彼の作品には全て彼が映っている。何故このようなアニメーションを作ったのか?またどのように作ったのか?その答えである展示物は立体的でその場でしか体感できない迫力を十二分に持っている。僕自身、日本のアニメの原画展示くらいの内容を想像していた。否である。美術館に展示するにふさわしい力がある。技術がある。生で見て、実感してみると納得がいく。そしてまた、ここまでの力を持たないと、アニメーションは作れないのかもしれないと絶望感すら感じる。

 アニメーション業界を目指す者にとって、また日本の誇れる文化にアニメーションがあると信じている人にとって、あるいはアニメーションとは全く縁のない人にとって。すべての人に足を運んでほしい。できれば、そのあと僕と語り合って欲しい。そういう特別な何かになる企画が「フレデリック・バック展」の本質なのかもしれない。フレデリック・バックの存在を知らなかった僕に、ここまで筆を執らせられるのだから。

 

 この記事は関連企画「ウェブ・レポーター大募集」第2段(http://www1.hpam-unet.ocn.ne.jp/upload/news/139/1.pdf)として無料で鑑賞させていただき、その対価として書いています。しかし僕自身はそういう事に引け目を感じずにズケズケ書くタイプなので、上記の内容は全て真実です。この記事を見た方が美術館に足を運び、できればそのことを僕に報告していただけると幸いです。

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広島県立美術館 http://www1.hpam-unet.ocn.ne.jp/

特別展 フレデリック・バック展 木を植えた男 http://www1.hpam-unet.ocn.ne.jp/special/index.php?mode=detail&id=75

開催期間:2012年7月14(土)〜9月17日(月)

 

 ちなみに今日2012年8月17日(金)にこの企画でフレデリック・バック展を見たわけですが、明日8月18日(土)には八丁座にてフレデリック・バックの映画の特別レイトショーが一回限りで行われるので、そちらにも行こうと思っています。フレデリック・バック展に合わせての上映。あの素晴らしい映画館であの展示されていた素材がアニメーション作品として完成し上映されるのかと思うと、今から心躍る気持ちです。

八丁座 http://www.saloncinema-cinetwin.jp/theater/